私は Gerhard Petermeir です。SPQRK IT-Services で PhraseVault を開発しています。以前は、メール全文のテンプレートをもっと工夫すればよいと思っていました。けれど、毎週繰り返していたのは、もっと短い文章でした。冒頭のお礼、末尾の結び、日程を提案する言い回し、そして寝ぼけていても打てるほど馴染みのある会社情報。相手への回答を書く本文は、毎回違っていました。
月曜の朝に保存するなら、この12の定型文(スニペット)から始めます。書き出し、結び、日程調整、会社情報です。数分で読み返して、自分らしい言い回しに直せます。そのあとで、メールの中だけに保存した文章が Slack や CRM のメモでは使いにくくなる理由と、数文字で定型文を探す方法を説明します。
いつの間にか繰り返している入力
どの一文も、それだけではテンプレートにするほどのものに見えません。
- 「ご連絡ありがとうございます。」
- 「返信が遅くなり、申し訳ありません。」
- 「よろしくお願いいたします。」と、自分の名前。
- 「火曜の10:00か、水曜の14:00なら空いています。」
- 郵送先の住所。
- VAT番号(付加価値税の識別番号)や UID。
- IBAN。入力ミスを避けるため、一桁ずつ確認する銀行口座番号です。
一文を入力したり探したりするのに、15秒ほどかかるとします。15秒なら、わざわざ保存しようとは思わないかもしれません。ところが金曜までには、同じ住所をメール、PDFに添えるメモ、ブラウザのフォーム、支払い担当者への Slack のメッセージに入力しています。一回ずつは小さな手間なので、積み重なった時間には気づきにくいのです。
私が気づいたのは、IBAN をメモのファイルからコピーしながら、書き出しだけは記憶を頼りに入力していたときです。会社のデータには保存先がありましたが、文章にはありませんでした。よくある返信テンプレートの見本は、メール全文を用意するものです。それでも、1時間後には同じ短い一文をチャットで打ち直していました。
Gmail のテンプレートと Outlook のクイック パーツの限界
Gmail のテンプレートは、同じようなメールを Gmail の中で繰り返し送るときに便利です。以前の名称である「返信定型文」と呼ぶ人もいます。Outlook のクイック パーツ(Quick Parts)も、Outlook の中で文章を再利用するのに役立ちます。仕事のほとんどが一つのメールアプリで済むなら、すでにある機能を使ってください。
困るのは、別のアプリに移ったときです。
Gmail にだけ保存した日程の提案文は、顧客から Slack で都合を聞かれたときには手元にありません。クイック パーツに保存した UID では、ブラウザにある仕入先のフォームをそのまま埋められません。CRM のメモにも同じ情報が必要です。打ち直すか、別の場所にもコピーを置いて、内容が食い違わないように管理することになります。
メールテンプレートの紹介では、貼り付け先がメール作成画面であることを前提にしている場合が多くあります。私の仕事では、メール、チャット、文書、フォームを使います。一つのメールアプリに保存するだけでは、ほかの用途までカバーできません。
書き出しと結びを保存し、本文は自分の言葉で書く
メール全文のテンプレートは、すぐに手直しが必要になります。「提案後の確認」を開いて3段落を削除し、本当に必要だった一文を書き直す。書き出しを入力する手間は省けても、そのあとの編集に時間がかかります。
繰り返し使うのは、次のような部分です。
- 書き出し。
- 結び。
- 日程を提案したり、候補を尋ねたりする言い回し。
- メッセージが変わっても同じ会社情報。
本文は、自分の言葉で書きます。判断、数字、具体的な承諾や断り。相手のメールを読んだことが伝わる一文は、そのつど自分で考えたいのです。
短い定型文はプレーンテキストなので、メールの外でも使いやすくなります。書き出しの一文なら、メール、文書、Slack にも使えます。長いメール全文では、そう簡単には使い回せません。
最初に保存する12の定型文
まずは、この12を保存してください。太字のラベルが、検索するときに使う名前です。その下にある文章が、挿入する本文です。実際に送る前に、会社情報、名前、打ち合わせの時間を自分のものに置き換えてください。ここにある VAT / UID、IBAN、住所は、形式を示すための仮のデータです。実際の支払い先ではありません。Muster GmbH は架空の社名です。
名前には、検索するときに使う言葉を入れます。たとえば
書き出し ありがとう や 会社 住所 です。1. 書き出し ありがとう
ご連絡ありがとうございます。いただいた内容を確認しています。
2. 書き出し フォロー
先日お送りしたメールの件で、改めてご連絡しました。お手すきの際に、続きをご相談できれば幸いです。
3. 書き出し 遅く
返信が遅くなり、申し訳ありません。きちんとお答えしたく、少しお時間をいただきました。
4. 結び よろしく
よろしくお願いいたします。
Gerhard Petermeir
Gerhard Petermeir
5. 結び 不明
ご不明な点があれば、このスレッドにご返信ください。改めてご説明します。
6. 結び 感謝
わかりやすくまとめていただき、改めてありがとうございます。
7. 日程 提案
火曜の10:00、水曜の14:00、木曜の09:30(いずれもウィーン時間)でしたら対応できます。どの時間帯がよろしいでしょうか。
8. 日程 候補
今週ご都合のよい日時を、二つか三つお知らせいただけますか。ご連絡をいただいた当日中に、どの日時でお願いするかお返事します。
9. 日程 遅刻
10分ほど遅れます。手が空き次第、参加します。すでに会議が始まっている場合は、そのままお進めください。
10. 会社 住所
Muster GmbH
Beispielgasse 12
1010 ウィーン
オーストリア
Beispielgasse 12
1010 ウィーン
オーストリア
11. 会社 UID
VAT / UID: ATU00000000
12. 会社 IBAN
IBAN: AT00 0000 0000 0000 0000
口座名義: Muster GmbH
口座名義: Muster GmbH
最初の1週間は、12で十分です。実際の仕事で新しい一文を2回使ったら、それを追加します。それまでは、12のままにしておきます。
覚えるための略語ではなく、探すための名前
私は何年も、この用途に AutoHotkey のスクリプトを使っていました。
::addr::、::iban::、::sig:: といったホットストリングを設定し、略語を入力すると文章が展開されるようにしていました。覚えられるつもりでしたが、1週間後にも、どの略語が住所に対応するのか混同していました。チャットの入力欄では、意図しないタイミングで展開されることがありました。フォームでは、うまく役立てられませんでした。ツールは機能していましたが、私には略語を覚える負担がありました。定型文には、探すときに入力する言葉で名前を付けます。
書き出し ありがとう。覚えている言葉が「ありがとう」だからです。日程 提案。これから日程を提案するからです。会社 IBAN。必要なのが IBAN だからです。
私のコンピュータでは、Windows なら Ctrl+.、Mac なら Cmd+. で PhraseVault を開き、数文字入力します。名前に加えて、保護されていない本文も検索対象なので、「UID」「ウィーン」「遅く」でも、名前を忘れた定型文を見つけられます。保護した定型文は、ロックを解除している間も名前だけが検索対象です。使いたい行を選んで Enter を押すと、カーソルの位置に挿入されます。呼び出しのショートカットは、設定で変更できます。
入力すると展開されるトリガー略語はなく、文章の途中で勝手に展開されることもありません。Slack や CRM のメモでは、予期しない挿入を直す手間が、最初から一文を入力するより大きくなることがあります。
定型文の保存先
メール、Slack、ブラウザ、文書で使う定型文は、どのアプリからでも呼び出せる場所に保存したいものです。いま入力している欄に、プレーンテキストを貼り付けられる必要があります。
私は PhraseVault に保存しています。ライブラリは、コンピュータ上のローカルな SQLite ファイルです。アカウントを作る必要はなく、IBAN を預かる PhraseVault のクラウドもありません。オフラインで動作し、Windows 10 以降の64ビット版と、Apple Silicon 搭載の macOS 13 Ventura 以降に対応しています。同じ利用者なら、1つのライセンスで両方を使えます。
もう1台でも使うときは、自分の Dropbox、iCloud、OneDrive のいずれかで同期するフォルダーにデータベースファイルを置きます。同期はそのサービスが行い、利用は任意です。PhraseVault の同期プランはありません。1台だけで使うなら、同期サービスは不要です。
PhraseVault はソースコードを公開しているので、IBAN を保存するツールの動作をコードで確認できます。ただし、OSI が承認するオープンソースライセンスではありません。ライセンスは買い切りです。記事が古くならないよう、価格はここには載せていません。現在の価格は料金ページで確認できます。
1週間の準備プラン
12の定型文を手作業で登録し、保存した日のうちに一度使います。
- 月曜。 書き出しを三つ保存します。昼までに、
書き出し ありがとうか書き出し 遅くを使って実際の返信を送ります。 - 火曜。 結びを三つ保存し、読み返します。
結び 不明が自分らしい言い回しでなければ、この時点で直します。 - 水曜。 日程調整の三つを保存します。次に都合を聞かれたら、実際の日時に直した
日程 提案か、日程 候補を挿入します。 - 木曜。
会社 住所、会社 UID、会社 IBANを保存します。仮のデータを、自分の住所、VAT / UID、IBAN に置き換えます。 - 金曜。 Slack で一度、文書かブラウザのフォームで一度使います。探しにくい名前があれば、検索欄に入力した言葉に変更します。
- 翌週。 別の一文を2回使うまでは、リストを12のままにします。それから、その一文を追加します。
まずは12から
ここにある文章は、すでに何度も入力してきたものばかりです。書き出し、結び、会社情報を12の定型文として保存し、検索できるようにする。メール全文のテンプレートを何通も作るより、小さな作業です。Gmail の外に移っても、そのまま使えます。
私は、文章を書いているアプリから Ctrl+. または Cmd+. でその一覧を開けるように、PhraseVault を作りました。Windows や Mac で試したい方は、phrasevault.app/jaをご覧ください。購入前には料金ページで価格を確認してください。この記事の12の定型文は、好きなツールで使っていただけます。